ニオイと嗅覚について
ニオイというのはとても曖昧なもので、嗅覚という感覚です。ニオイ自体は「化学物質」であり、それは合成化学物質も含めており、それを感覚が感じることによって「におう」という実感を得ることです。
人・動物・植物・土・水などそれぞれにニオイという物質が出ています。そこにはもちろん微生物も含まれます。
ニオイは合成されたものでなければ生物由来ということです。
嗅覚は脳と直結している
鼻の中にニオイを感知する組織があり、嗅覚は脳に一番近い場所にあり、視覚や聴覚よりダイレクトに脳に入ってくると言われています。
その組織は人や動物では組織の表面積が違います。単に表面積の大小で感知能力が違うわけではなさそうです。
- 人・・・400種類
- 犬・・・800種類
- マウス・・・1200種類
- アフリカ象・・・2000種類
水の中の生物はもっと少ないと言われていますので、陸上にはニオイの物質が多くあるということです。
同年代のニオイには気がつかない!?
ニオイが生物由来ということは、もちろん加齢臭も生物由来なので人から発するニオイという化学物質です。しかし生物由来であるニオイは高齢者にかかわらず、生まれてからずっと出ている物です。年齢を重ねる毎に代謝される生物由来の化学物質も変化をするので、当然年齢などに関係なくニオイ物質は出しています。
ただ、同年代であると発する体臭も似たようなものとなり「気がつかない」のです。年代がずれると違うニオイ物質なので、より気になるわけです。
ニオイを効果的に利用する菌がいる
こんな論文があります。
ある種の土壌細菌が独特な匂いを放出して動物を誘引し、それが環境中での勢力拡大に役立っていることを明らかにした。
ストレプトマイセス属Streptomycesの細菌は土壌中に広く存在し、雨が降った後の地面に特徴的な「土くさい」匂いの元になるゲオスミンという有機化合物を作る。
トビムシ(翅のない小型の節足動物で、昆虫と非常に近い関係にある)がこの細菌に引き寄せられることを明らかにした。研究室での実験では、トビムシはゲオスミンを触角で直接感知することが観察された。また、トビムシがこの細菌を餌にすると、細菌の芽胞がトビムシの体に付着した。その後トビムシは、芽胞を体表につけたまま、または摂取した芽胞を糞として環境中にまき散らした。
ニオイを使って自分たちを拡散させる賢い菌です。これは花や果物なども同じように花粉を運ばせたりすることと同じです。
細菌が臭う例で一番身近なのは「汗」かもしれません。
「汗は臭う」と誰しも思いますが、汗自体にニオイはありません。汗と皮脂などを餌に細菌が分解をすることでニオイ物質を発するのです。
どちらも「土のニオイ」「汗のニオイ」ではなく、菌のニオイです。
文化で異なるニオイとの向き合い方
ニオイに対して日本人はとても敏感で、消臭剤の売れ行きが最も多いと言われています。
白人は遺伝的なこともあり体臭問題は古くからありました。そのため香水文化が発達しました。強いニオイを纏っても生活を邪魔しないように、料理やワインは香りがしっかりしていることも納得です。
しかし日本料理は素材の香りを大切にするので、香水など香りの強いものは喜ばれません。また日本人は比較的潔癖な文化なので、不衛生な感じを抱きやすくにおいを消したがります。そのため消臭剤の購買率もあがるのです。
ただし多くの消臭剤は匂い分子を消さず、空間にある匂いを吸着させて地面に落とす、衣服についた匂いを衣服に留める、というのが大方の原理のようです。もしくは別のニオイを発する事で「不快に感じるニオイ」の感覚を麻痺させ、消臭したかのように思わせることです。香水文化と似ています。
除菌剤の中にはニオイの分子を消すものもあります。菌などが関係したニオイであればわかりやすく「除菌」することでニオイを消します。
無臭で除菌力も強いGSE(グレープフルーツ種子抽出物)もその一つ。消臭後は抗菌力で消臭を長く維持します。