一般的に、空気が乾燥しているとウィルスが長生きするから加湿器で湿度をあげてウィルスの活性を低下させましょう、という意見をよく耳にします。
そもそもなぜウィルスだけ加湿?
冬はウィルス性の感染症が流行る時期です。その理由は「湿度が低い」「乾燥しているから」と言われています。そもそもウィルスは乾燥が好きで湿気が苦手なのでしょうか。ちなみに細菌は水分が大好きで、栄養があればどんどん増えてゆきます。
ウィルスと細菌の違い
構造的に、ウィルスは細菌と異なりタンパク質の膜の中に遺伝子を持つ単純なつくりです。逆に細菌は細胞といわれるもので、複雑なつくりをしています。
–違い① 自分で分裂して増えることができるかできないか
ウィルスは自分で増える機能を持っていません。宿主といわれる人や動物の細胞の機能を使って増えます。効率的というかズルいというか賢いというか、やっかいな存在です。細菌は単独で分裂し、増えます。
–違い② 細菌とウィルスの大きさ
真菌(カビ)が一番大きく約3~40㎛(マイクロメートル)。1000分の3~50分の1ミリくらいです。次に細菌で0.5~10㎛。1000分の0.5~100分の1ミリ。
一番小さいのがウィルスで20~300㎚(ナノメートル)。小さすぎて単位が変わってしまいました。50万分の1~10万分の3ミリくらいです。
この途方もない小ささが「乾燥するとウィルスが活発云々」と言われる所以です。小さく軽いので長時間空気中に漂うことができるわけです。
湿度を上げてもウィルスの活性は下がらない
ウィルスは小さいから空気中を漂いやすい事がわかりました。では空気が乾燥している状態と湿度が高い状態を比べると、漂っているウイルスにどのような違いが出るのでしょうか。
湿度によって異なるウィルスの状態
- 湿度が高い(空気中の水分が多い)と重くなり落下しやすくなります。
- 湿度が低い(乾燥している)と長時間空気中にフワフワと滞在し、人や動物の中に入りやすくなります。
- 飛沫で拡散される場合、飛沫が重くてすぐに落下しそうですが、湿度が低いと飛沫の水分が蒸発しやすく、あっと言う間に軽くなって舞い上がり、浮遊時間が長くなります。
東北大学でインフルエンザウィルスを使って咳やくしゃみで排出され環境中に落下した微細な分泌物(落下飛沫)を想定した研究をされています。
インフルエンザウィルス:A型・B型・C型の3種類を微量の液滴をシャーレ上に滴下したものを環境中に放置するやり方で
- 温度:5℃・20℃・30℃
- 相対湿度:20%・50%・80%
温度と相対湿度の組み合わせで9通り作り、経過時間毎にウィルスを回収して調べている。
結果:ウイルス液滴が蒸発せず液滴の形態が保たれている状態では
- A型インフルエンザウイルスは58%以上、
- B型インフルエンザウイルスは77%以上、
- C型インフルエンザウイルスは81%以上
と高い生存率だった。
一方、ウイルス液滴が完全に乾燥した状態では、各ウイルスの生存率は30%以下であった。
同じ蒸発程度ならば、温度がウイルス生存率に影響を与えており、より低温環境下での生存率のほうが高い傾向を示した。また、ほぼ乾燥しているが僅かに湿り気のあるウイルス液滴の場合でも、ウイルス生存率は比較的高い値であった。
種々の温度、湿度環境下におけるインフルエンザウイルスの経時的活性変化に関する研究
【ウィルスの生存率が高くなる条件】
相対湿度:高い(水分量が多い)
温度:低い
という結果から 「乾燥した冬にインフルエンザウィルスが活性化する」 というわけではなく、「冬」には活性化するが「乾燥」は関係ない。
以上のことから、加湿によるウィルス対策はウィルスをやっつけるためではなく、湿気で重さを与えて下に落として浮遊時間を短縮させ、 できるだけ人の体に侵入させるチャンスを減少させるためのもの、ということです。
加湿はウィルスを落とすためだった
上記の説明から、冬場の加湿はウィルスの活性を低下させるためではなく、「ウィルスを落とすため」の加湿だという事がわかりました。暖房で部屋の空気が乾燥するので、加湿してウィルスが浮遊しづらい環境にしましょう。
しかも落としたウィルスが、あらかじめ床で待ち受けしている除菌抗菌剤で不活化されれば、再び部屋中を舞う事がなくなり、とても効率の良い加湿になります。
そんなこと可能でしょうか? 可能です。
水の代わりにGSE(グレープフルーツ種子抽出物)水溶液で加湿
水で加湿するとウィルスが下に落ちるだけです。しかしGSE水溶液を加湿器で噴霧したり、空間の湿度を上げるという意味で空間にミストスプレーすると、水溶液が落ちた場所の待ち受け除菌抗菌や、ついでに消臭効果も期待できます。
床に落ちたミストも無駄にせず「抗菌できる」ことがGSE水溶液の強みです。