一般的な除菌で使われている、アルコール(消毒用エタノール)・次亜塩素酸ナトリウム・次亜塩素酸水、石鹼(除菌剤ではないが、対策としてのもの)、GSE(グレープフルーツ種子抽出物)の濃度・時間・注意点などを書き出しました。
推奨濃度
消毒用アルコール:70~80%
消毒用アルコールはエタノールを使用しており、濃度は70%以上を推奨されています。アルコールの中でも安全性が高く、除菌効果も高いとされています。濃度は70~80%がよく、濃度が高すぎるものは除菌効率が下がります。
次亜塩素酸ナトリウム:0.05%
厚生労働省ウィルス対策では塩素が0.05%が推奨濃度です。これはあくまでウィルス対策としての濃度であり、ノロウィルスなどの吐瀉物には0.1%です。塩素系によく言われる、「減衰=塩素濃度の減少」があることから、推奨濃度は高め設定になっています。
次亜塩素酸水:0.008%~0.02%
80ppm=0.008%以上の物が推奨されています。ずいぶんと薄いと思われますが、作りたてでヒタヒタに濡らす必要があります。濃度は薄いが、量が必要ということです。商品やPhによっても推奨濃度にばらつきがあり、80ppmから200ppmのものまであります。
石鹼:特になし
石鹼は脂肪酸とアルカリでできています。身体を洗う用と身体以外を洗う用でわかれています。ウィルス対策としては基本的に「手指用石鹼」の事を示します。濃度や薬用など特に限定はされていません。
GSE(グレープフルーツ種子抽出物):0.05%~0.1%
日本では地味な存在ですが、海外ではエビデンスや論文が多数出ています。濃度はエビデンスに基づきメーカー各社で設定されていると思われます。抽出物自体が少量で効果が出る事が確認されています。アルコールやその他の素材を混ぜなくても十分に働く成分です。
濃度は、GSE水溶液(グレープフルーツ種子抽出物と水が成分)、アルコールが添加されているもの、グリセリンなどが添加されているものなどにより上下差があると思いますGSE水溶液は基本的には0.05%~0.1%で十分に除菌効果が望めます。
除菌メカニズムと時間
アルコール(エタノール):10秒~15秒
エタノールの濃度が70%以上で推奨されていますが、濃度が高い方がよさそうなイメージはあるものの、高すぎるとなぜいけないのでしょうか。それは除菌メカニズムによるものです。
細菌やウィルスのタンパク質を破壊して除菌または殺菌します。除菌殺菌するために一定時間細菌やウィルスと接触する必要がありますが、エタノールは揮発する特性があります。濃度が高いと揮発の時間が短くなり、接触時間もおのずと短くなってしまうため、除菌殺菌する間もなく揮発してしまうからです。
特段、時間については諸説あるようです。理由はアルコールの濃度とグレードです。エタノールにも医薬品、工業用、食品添加物としてなど用途別があります。その中でも濃度がそれぞれあります。
厚生労働省が平均的な70%~80%の医薬部外品にあたるグレードの物で10秒から15秒、手をすりあわせることを推奨しています。
次亜塩素酸ナトリウム:おおよそ1分~2分
長年食品や介護、医療の現場で活躍してきた次亜塩素酸ナトリウムは強アルカリ性の溶液です。細胞壁や形質膜を構成するタンパク質や不飽和脂肪酸などに吸着、局所的に分解することで細胞の表層の構造に損傷を与え、不活化します。
濃度は0.05%に薄め、その後は水拭きなどが必要です。ただし、0.15%以上であれば1分間で完全消毒と言われています。ウィルス対策が半分の濃度であれば、2分くらいをめどにするべきなのかもしれません。
次亜塩素酸水:20秒以上~1分以内
次亜塩素酸水は細菌やウィルスを強力に酸化させて除菌します。有機物に対する反応が早いため、菌を除菌する前に減衰してお水に戻ることもあり、多めの量を使用し、浸水させることが必要です。そのため除菌の必要時間に幅がでます。
石鹼:25秒以上
石鹼は水と油の境目に作用する界面活性剤が、油汚れを落とします。この働きが菌やウィルスの脂質の膜を破壊することでウィルスなどを不活化させます。それとともに汚れも落とし、不活化されていない菌やウィルスも洗い流す作用もあります。
基本的には洗い流すことで「数を減らす」ことが重要です。
10秒のもみ洗いと流水で15秒すすぐことが推奨されていますので、全部で25秒から30秒かかります。手洗い方法には、日常生活レベルの「日常的手洗い」、病院の感染予防を目的とする「衛生的手洗い」などがあります。
GSE(グレープフルーツ種子抽出物):5秒
グレープフルーツ種子抽出物は浸透圧で除菌します。菌やウィルスの中とGSEの濃度の差がポイントです。浸透圧で細菌やウィルスなどの中の水分を外に出してしまうことで除菌します。
除菌にかかる時間は以前は20秒から30秒と言われていましたが、現在の検証では約5秒と早く、その後抗菌します。
注意点
アルコール(エタノール)
アルコールは揮発が早いので、揮発しているときに火気類に注意が必要です。揮発時以外でも保管中など、規制もあるくらいです。
広い面にスプレーなどは爆発炎上の恐れとともに、吸い込むことで体調不良も起こすことがありますので十分に換気をする必要があります。
移し替える場合の容器もアルコールで溶解しない物を使いましょう。
その他、金属の腐食や布に対しての劣化や色落ちにも要注意です。
さらに、芽胞菌やエンペロープ無しのウィルスには効果が認められませんので、使用できません。
保管時は火気に気をつけて、直射日光を避け高温の場所には保管しないでください。
- 火気厳禁・広い面には注意
- 十分な換気
- 容器を選ぶ
- 金属の腐食や劣化
- 布の色落ち
- 不活化できない菌やウィルスがある
- 保管に規制がある
次亜塩素酸ナトリウム
次亜塩素酸ナトリウムは皮膚に対する刺激が強いので、人に対しては使用できません。手袋や時によりゴーグルなどで目を保護する必要があります。
汚れがある場合はまず汚れに反応してしまうので、汚れを落としてからでなければ十分に力を発揮できません。
ニオイも強く、使用時の換気は十分に行う必要があります。
金属の腐食、布物の色落ち、さらに使用後は水拭きなどの処理が必要です。
減衰しますので、長時間の保管に向きません。使うときに使うだけ必要な濃度で作って使用する、が推奨されています。
保管は直射日光が当たる場所や高温の場所には向きません。
- 人に対して危険
- あらかじめ汚れを落とす必要がある
- 換気が必要
- 金属の腐食や劣化
- 布の色落ち
- 減衰する
- 保管に注意が必要であり、保管に向いていない
次亜塩素酸水
皮膚に対する刺激はほぼありませんが、目に入る場合は注意が必要です。
汚れがある場合はまず汚れに反応してしまうので、汚れを落としてからでなければ汚れにまず反応してしまい、除菌する前に減衰しお水に戻ってしまいます。
次亜塩素酸ナトリウムのような刺激臭はありませんが、塩素臭があり、塩素アレルギーの方は体調不良などをおこす場合があります。
強力な酸化をおこすため、金属の腐食や劣化に注意が必要です。
触れる空気、ホコリなどの有機物全てに反応するため、長期の保管に向いておらず、短期であっても保管中に減衰していきます。有効濃度を維持できているのかがわかりにくい特徴があります。30センチ離した距離でのスプレーで除菌できないことがあります。
食品添加物として扱う場合は最後に流水で20秒以上かけ流さなければなりません。
保管は直射日光を避けた冷暗所で揺れなどにも注意が必要です。
- 目などに入ると危険
- あらかじめ汚れを落とす必要がある
- 塩素アレルギーに注意が必要
- 金属の腐食や劣化
- 減衰が早い
- 30センチ以内でのスプレー
- 有効濃度がわかりづらい
- 塩素を取りきるため流水でかけ流す
- 保管に向いていない
石鹼
石鹼は特にありませんが、目や口に入れないよう気をつける必要があります。
石鹼は除菌もしますが、カビも生えますので保管や使用中には注意が必要です。
- 誤飲や目に入るなどの注意が必要
- 使用時にもカビの発生がある
GSE(グレープフルーツ種子抽出物)
GSE(グレープフルーツ種子抽出物)は特段、注意が必要な場所がありません。
無臭で、無刺激です。保管時も容器を選びません。金属の腐食もほぼなく、布物の色落ちの心配はありません。もちろん爆発炎上の恐れは一切ありません。
800種類の菌・ウィルスと100種類の真菌(カビ)の不活化をすると言われていますので、日常での迷いは必要ありません。
保管は直射日光を避けていれば抗酸化作用もありますので、特に問題はありません。
- 注意点が見つからない
GSEユーザーのつぶやき
今では日常の行為になった「除菌」。数年前に突如訪れた流行病で社会が混乱した時は、除菌できるできないが最優先で安全性や注意の説明は二の次、といった印象の情報が多く飛び交っていました。現在は推奨されている除菌や抗ウィルスの方法を見直して、利用者自身が調査・選定した除菌剤を使うことで、二次的、三次的なトラブルを防ぐことが必要となってきた時代に変わりつつあります。